認知症における通所介護施設の利用について(考察 2020)
現代の日本は高齢化が急速に進んでおり、医療費の増大や年金制度の不安など様々な問題を引き起こしています。平均寿命が延びたことによるもうひとつの弊害は、認知症患者の増加です。体は元気なのに判断力や思考力が衰えてしまうこの病気は、周囲の人間にとって非常に厄介でありその介護には大きなエネルギーを必要とします。これまで認知症の患者に対しては24時間のケアが行える入居型のサポート施設などが推奨されてきましたが、必ずしもこれが正解というわけではありません。認知症と言うと常に意識や思考が異常な状態で、暴れていたり大声を出していたりといったイメージがあります。しかし、個人差もありますが大抵の場合その症状は途切れ途切れであって、健康な時と同じようにコミュニケーションを取れたり、昔の記憶をしっかり保っていたりという時間帯もあるのです。特に家族と一緒に時間を過ごしたり、ペットと触れ合ったりといったことでこの正常な時間が延びるとも言われています。まだまだ認知症については研究が進んでおらず、はっきりとしたことは言えませんが、患者本人がストレスなく、また元気だった時と同じような環境で過ごすことが重要だと言われているのです。そのため完全に施設に入居してしまうのではなく、必要な時だけ通ってケアを受ける通所介護施設というのは、認知症の患者にとってかなり現実的な選択肢だと言えるでしょう。体に重度の麻痺があったり、自分で動けない人とは違って認知症の患者は自分の足で歩いたり車に乗り込んだりは問題なくできますから、うまく習慣づけることができれば通所するのはそれほど負担にはなりません。普段は落ち着いた自分の家庭で過ごし、必要な時に施設に向かうということで、適切な刺激が脳に与えられ症状が緩和するという説もあります。送迎の負担はかかってきますが、完全に施設に入居するより費用もかなり安くて済みますし、住み慣れた家にい続けることで患者の生活の質も維持できるでしょう。このように考えると、認知症の患者やその家族にとって通所介護施設の利用というのは、かなり利点の多い選択だと言えます。