嚥下障害における通所介護施設の利用について(考察 2020)
食べ物や飲み物を咀嚼して飲み込み、胃に送る動作のことを「嚥下」と言いますが、高齢者では嚥下機能が低下し、食べ物がのどにつかえてしまったり、気管に入ってしまったり、飲み込めずに口から出てしまうなどの嚥下障害が発生する場合があります。嚥下障害は、窒息や肺炎など命にかかわるケースも発生しますし、食べ物を胃に送り込むことができないので、栄養失調になったり、脱水症状に陥る場合もありますから注意が必要です。嚥下障害を持つ方が通所介護施設の食事サービスを利用する場合には、咀嚼の状態を考えて食事を用意してくれることがメリットとなります。咀嚼力が落ちた高齢者などに通常の状態で食事を出してしまうと、食材を噛むことが難しいため、丸呑みしてしまい、窒息や誤嚥を誘発してしまいます。かと言って、食材をすべてミキサーにかけてしまうと、食感や味などが変わってしまい、食事に対する意欲が失せてしまったり、噛む必要がない形状のため、嚥下機能がさらに低下してしまう場合があります。ですが、通所介護施設では、食材を小さく刻んだり、ミキサーを使ったり、トロミをつけたりと利用者の咀嚼や嚥下の状態に合わせた食事を用意してくれます。さらに、特に高齢者を対象とした通所介護施設では、誤嚥や嚥下機能を維持するための口腔体操などを行っているところがたくさんあります。口腔体操は、嚥下や咀嚼が特に必要とされる食事の前に行われ、舌や口周りの筋肉を動かし、食べ物を噛んでうまく飲み込むことをスムーズにする効果があります。これらの体操は口腔機能だけでなく、腹筋や肺活量などを向上させるような要素も取り入れられていて、誤って食べ物が気管に入っても、吐き出して誤嚥を予防することも可能になります。こちらの運動は車いすに座った方でもできるので、食事前にテーブルに着いた状態で行うことにしている通所介護施設もあります。看護や介護を担う職員が各利用者の病歴をチェックしていて、口腔体操などの時に嚥下状態を観察してくれていることも安心感があります。