佐賀県嬉野市における木材市場の現況(令和2年 2020)
佐賀県南西部に位置する嬉野市は肥前山地と肥後山地に囲まれた盆地で、市内に2つの木材市場を有しています。2020年上半期の嬉野市の木材市場の現況は約58万トンの取り引き高となっており、前年度よりもマイナス15%の数値です。嬉野市の木材市場は1991年の木材自由貿易のスタートと同時期に設立されており、年間総量の約65%が海外市場向け取り引きとなっています。そのため貿易に主軸が置かれている市場となっているのですが、2020年2月から世界各国で猛威を振るっている新型コロナウイルスの影響をダイレクトに受けた木材市場です。主な取引国であるイタリア・フランス・アメリカ・アラブ首長国連邦では感染拡大に伴って人と物の移動を制限しており、木材市場に至っても例外ではありません。これにより嬉野市の木材市場では輸出されるはずの木材が停滞したままで、取り引きされていないことが取り引き高の減少となりました。しかし、6月以降は各国で制限を解除する動きがあり、再び嬉野市の木材市場でも取り引きが再開される見通しです。嬉野市の山林課が5月に公開した定例報告書では、2020年度の木材収益は約4億円で前年よりも12億円もの赤字となる算出をなされていますが、2021年以降は回復することでしょう。嬉野市の市場で取り扱っている木材はスギ・ヒノキ・クヌギの3品種で、すべて市内にある肥前・肥後山地で伐採されたものです。このため各木材の1kgあたりの取り引き額は約80〜120円と全国相場よりも10%以上も安くなっていますが、これは輸送コストが掛からないためといえます。2020年以降の嬉野市の木材市場の動向は、現況では赤字収益が大きいですが再び黒字へと転換できるだけの市場規模を有してます。特にアラブ首長国連邦との年間取り引きは約40万トンで、さらに木造住宅の需要が伸びていることで2025年には50万トンを超えるほどの大口取引となって大きく収益を伸ばせる市場です。