日野町における木材市場の現況(令和元年 2019)

 

鳥取県の日野郡にある日野町は、内陸部の山間部に隣接する地域で、豪雪地帯にあります。寒さに強い天然のスギ林が自生していた事から、昔から林業が盛んな地域でした。第二次世界大戦での空襲により、日本全体で木造建築の建築ラッシュになり、昭和20年以降30年代前半ぐらいまで乱伐が繰り返されました。高度経済成長後に、復興の乱伐による天然木材の減少に加え、安くて高品質な輸入木材が流通するようになり、日野町の木材市場は衰退しました。林業従事者の人口も次第に減少して、森林は荒れ果てていきました。林業従事者が減って、間伐などによる森林管理が十分に行われなくなり、木材の生育が悪くなっただけでなく、土砂崩れが頻繁に発生するようになりました。日野町ではこうした状況に危機感を感じて、森林の適正な整備や地域の産業育成や地球温暖化や災害対策などを目的として、公共建築物等における木材の利用促進に関する方針を策定しました。その後日野町で育てて伐採されて加工された木材が、鳥取県や日野町流域の公共建築物などに積極的に利用されるようになりました。木材が使われた具体的な公共建築物は、小中学校や老人ホームや保育所などの社会福祉施設や、病院や診療所などの医療施設や図書館や公民館だけでなく、庁舎や公営住宅や公共交通機関の宿泊施設など幅広く使われています。それ以外にも道路のガードレールや案内板や、公園の柵やベンチや遊具など至る所で利用されてます。公共建築物等に日野町で生産された木材が利用される事で、林業従事者の人口増加や木材加工の設備投資が促進され、木材市場は現況では回復し始めてます。それに加えて、2000年代以降の世界的な木材価格の高騰により、日野町でも海外への良質な木材を輸出量が増加し始め、現況の木材市場を押し上げ、将来的にも増加が見込まれます。江戸時代に全国的に有名でしたが、近代以降廃れて途絶えていた伝統工芸品の日常使いできる日野椀も生産が復活して流通し始めました。

 

 
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