室町時代の木材市場を振り返る(2019)
足利尊氏によって開かれた室町時代は西暦1336年から1573年までの237年間で、貨幣経済の発達によりそれまでの社会や文化、商業などが大きく変化した時代です。室町時代を振り返ると職業集団である「座」が結成された時代で、木材に関しては朝廷や社寺を本所にした木材商人によって材木座が結成されたことが確認できます。現代に名称を残す「京都堀川の材木座」は室町時代に結成された座として知られており、これが現在で言うところの木材市場の役割を担っていたと考えられています。しかし、室町時代の商業事情はまだ食品が中心で木材市場はまだまだ未発達の時代でもありました。当時の家屋などの建築物はそのほぼ全てが木材によるもので木材の需要は高いものがありましたが、木材は購入するものと言うよりも採ってくるものであり、まだ経済的にその役割は十分に果たしていませんでした。当時の記録として残っているものが奈良県でスギの植林が開始されたこと、本格的な人工造林の記録としては最も古い記録となっています。室町時代も後半になると、このような植林推進の一方で、戦乱からの復興や豪華絢爛な建築物の建造により、既に奈良時代から始まっていた木材の枯渇は大きく加速し森林資源は急速に減少することとなります。当時の木材市場に与えられた役割としては、主に伊賀の国や丹波の国など遠方からの木材の調達とその運搬並びに、近隣で伐採された木材を割って板や角材などにすることが中心でした。また、人口の増加や都市化により燃料などにも木材は大量に利用されることになり、商業のなかでも食品に並び木材市場も重要な役割を担うようになります。しかし、これらの産業のために木材を供給した森林は、その再生能力を超えた伐採により管理していた各藩が危機感を持ち始め本格的な植林が始まりました。これにも木材市場は貢献することになったことから、室町時代の木材市場は人々の生活や経済に大きな影響を与えていたと考えられています。