佐賀県多久市における木材市場の現況(令和2年 2020)

佐賀県多久市における木材市場の現況(令和2年 2020)

 

筑紫山地の麓にある佐賀県多久市には、佐賀県立木材市場東部センターと計3つの製材所を有している林業が活発な地域です。主にヒノキ・カシ・スギの3品種の木材を産出しており、カシに至っては国内でも希少と言われている黒檀の仏壇を製造するやめの材料になされているほどです。多久市の2020年の木材市場の現況は約210万トンの取り引き高となっていて、前年度よりもプラス20万トンの数字になっています。林野庁による全国各地の木材市場調査が開始された1983年当時は、多久市の木材市場では年間320万トンもの木材が取り扱われていた規模が大きな市場でした。この総量のうち45%が海外市場向けの木材で、アメリカ・フランス・ドイツなど世界5か国に向けて1993年まで輸出をなされていました。ところが、海外需要に応えるための山林伐採が激しくなったことを懸念して環境庁(現環境省)が各地の山林保全運動をおこなうようになり、筑紫山地もそのひとつにリストアップなされます。これを受けて主な産出先としていた多久市の木材市場も規模を縮小することとなり、海外輸出取り引きを1997年に停止して現在に至ります。現在は国内需要のみに対応しており、ヒノキとスギは関東地域向けの住宅建材・カシは大阪府八尾市の地場産業である仏壇製造の材料に使用され、需要と供給のバランスを取っている市場です。なお、多久市内でも箪笥や机などの家具作りが盛んで、これらも地元のスギを使用して生産されています。多久市の財政のうち30%が林業の収益が占めており、今後も地域を代表する産業として守られていくことでしょう。2020年以降の多久市の木材市場の動向は、引き続き国内需要向けの市場で安定した取り引きをなされていくと見受けられます。環境省による山林保全規制が2022年に緩和されるので、その後は現在よりも木材取引量を上げて全国規模の取り引きにまで成長する可能性も秘めています。

 

 
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