豊島区における木材市場の現況(令和2年 2020)

 

豊島区の「都営木材市場東部地域センター」における2020年上半期の木材市場現況は、前年の上半期と比較すると約18%のマイナスである28万トンの木材取り引き高となっています。この数字は、1986年から林野庁がおこなっている各自治体別の木材市場調査の中でも大幅なマイナスで、2020年度全体の総取り引き数に大きな影響を与えると林野庁の報告書に記されているほどです。豊島区の場合、年間310万トンの木材を取り扱っており、このうちの約76%が海外輸出向けです。木材市場の要が輸出に占められていますが、2020年3月から世界規模で問題となっている新型コロナウイルスの影響で、豊島区の木材市場と取引をしていたアメリカ・フランス・イギリスの3か国では輸出入制限をしており、木材に至っても制限対象となりました。この影響が2020年上半期の木材市場現況に顕著にあらわれているため、取り引き高の大幅なマイナス数字を叩き出す結果になりました。なお、例年であればスギ・ヒノキ・マツが住宅建材として各先進国向けに輸出されており、豊島区の財政の約35%を占める大きな収益を生んでいます。区で取り扱っている材木は足尾山地で伐採されているもので、関東ローム層の肥沃な土壌で育った高品質な木々です。木目が美しく幹が太いことから高級住宅向けの建材となっており、市場の卸価格は1kgあたり約150円と全国平均値よりも高いのが特徴です。2020年度内に世界各地で新型コロナウイルスの猛威が収まったとしても、元通りの経済活動になるまでには時間を有するため、2020年度内は豊島区の木材市場も例年よりは取り引き高は減少したままになるでしょう。現況を考慮すると豊島区だけでなく全国的に輸出の割合が高い木材市場はマイナス域になっています。今後は輸出だけでなく、国内需要お流通ルートの開拓の重要性を林業全体で見直す必要があり、これが安定した収益確保の鍵になるといえます。

 

 
トップへ戻る