豊川市における木材市場の現況(令和2年 2020)

 

豊川市は愛知県内でも東部にあたる三河地方の中心的な都市として昔から栄えており、特に東海道や伊那街道などの街道筋の宿場町として、あるいは豊川稲荷の門前町の位置づけで知られてきました。戦前には海軍の施設が置かれたことからその後は一貫して工業化の道筋を歩み、東名高速道路や東海道本線、飯田線などの交通インフラの整備もあいまって、人口の集積が進んでいます。もともと豊川や矢作川の沿岸地域、わけてもその上流にあたる現在の新城市にあたる鳳来寺山を中心とした一帯は林業が盛んで、鳳来スギはある種のブランドともなっていました。豊川市の現況をみると、森林面積は6000ヘクタールに届かない程度となっており、他地域のような国有林はあまりなく、私有林が主体であって、樹種はヒノキとマツがツートップの様相を呈しています。もっともこれらの森林資源が豊川市における素材生産に直接的に結びついているとはいえず、製材用にごくわずかに利用されているにとどまり、この地域の主役はあくまでも隣接する新城市となっています。したがって木材市場の現況に関して特筆すべきものはなく、かえって新城市の針葉樹の製材またはパルプ・チップ用途の利用動向に注目するのが適当です。木材加工についても基本は輸入材であって、市レベルでの地産地消も特にありません。ただし豊川市は自動車製造や部品製造、あるいは港湾を通じた積み出しなどで周辺の豊田市や豊橋市、政令指定都市にあたる名古屋市とも緊密な関係を築いているため、通勤などの便宜を考えて定住するファミリー世帯も多くなっています。そのため木造一戸建て住宅の需要は高く、広い意味での木材需要を検討するのであれば、地元の住宅着工件数などの統計指標にも目配せをしておくのがよいといえます。現に豊川市は持ち家比率が70パーセント程度と愛知県内の他の都市と比較しても高い割合を示していて、年間の住宅着工件数は景気の波にも左右されるものの、例年1500戸以上をキープしています。

 

 
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