下田市における木材市場の現況(令和2年 2020)

 

下田市は静岡県の東部、伊豆半島の最南部に位置しており、南側一帯は太平洋に面しているところから、江戸幕末には開港をめぐって日米和親条約が締結された舞台としても有名です。また海水浴場や温泉街が栄えており、伊豆急などの公共交通機関、あるいは整備中の伊豆縦貫自動車道などを経由して外部から来訪する観光客も多いリゾート地のひとつでもあります。逆に海岸部を除く市内の多くの土地は森林が占めていて、森林面積はおよそ8000ヘクタール、森林率は76パーセントと、伊豆半島のなかでは伊豆市に次いで林業従事の割合が高い地域ということができます。もっとも下田市の木材市場の現況をみると、かならずしもこうした環境のなかで楽観できる雰囲気ではなく、全国的な木材需要の低迷や林業のコスト高などの要因で生産基盤が弱まっていることがうかがえます。もちろん地元行政でも手をこまねいているわけではなく、静岡県では森林づくり県民税を導入し、これを財源として下田市はじめ県内各地で森の力再生事業により間伐の促進などを図っています。特に最近は木食い虫によるナラやカシなどの立ち枯れの被害も多くなっており、定期的な間伐で森林の維持整備を進めることがきわめて重要となっている状況です。また下田市でも公共建築物への地元木材の利用促進を方針に掲げており、学校や公民館などの社会教育施設への木材需要が生まれています。市内には静岡県庁の賀茂農林事務所や伊豆森林組合などの林業関連の拠点が置かれており、半島南部での中心的な役目を果たしていることには変わりがありません。近年は地域おこし協力隊が里山づくりなどの林業部門でも力を発揮しています。グリーンツーリズムとよばれる農林水産地域と都市部との体験型観光を通じた交流も、市内の実態をよく知ってもらうために近年は盛んとなっており、当市でも林業振興の一環でこれらのアピールやガイダンスに取り組んでいるところです。

 
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