太地町における木材市場の現況(令和元年 2019)

 

和歌山県の南部に位置する太地町では、紀伊山地で伐採されている杉・桧の2品目を取り扱っている木材市場があります。県立林業センターに併設されている市場では、国内だけでなく海外輸出向けの木材の競りがおこなわれており、ここで競り落とされた木材は隣りの那智勝浦町と和歌山市にある港からコンテナ船で世界各国へと輸出されていきます。2019年の太地町の木材市場の現況は、4月から10月も上半期のみで約410万トンの取り引き高となっており、下半期と合わせると計700万トンを越える見込みです。和歌山県は県面積の約80%が山林となっており、国内有数の杉・桧の産地となっています。1984年から林野庁による全国各地域の木材市場調査がおこなわれるようになりましたが、当時でも和歌山県は全国2位の木材産出高を示していたほどです。そのうち太地町の林業センターで取り扱っている件数が和歌山県内でもっとも多く、1984年の段階で約250万トンでした。現在の1/2程度の総量しかありませんが、これは1984年当時はまだ木材の自由貿易化がなされておらず、国内需要にのみに応える形であったためです。1990年から日本でも木材貿易が自由化になり、翌年の1991年には太地町では約500万トンの取り扱い高になりました。なお2019年上半期の総量のうち、国内向けに限定した総量は約160万トンと大幅な減少になっています。国内の木材消費量は2000年を境に全国的に減少傾向にありますが、これは住宅用建材の需要が少なくなっていることに起因しているからです。現在の日本の家屋は木造から鉄筋へとシフトチェンジがなされており、2018年に全国で建設された住居の約7割が鉄筋造りとなりました。今後も国内の木材の需要はさらに減少していくことでしょう。2019年以降の太地町の木材市場の動向は、市場シェアの約80%が海外輸出となってゆくと予測されます。総量のみに着目すると大きな変動は見受けられず、木材取り引きは今後も太地町の財政を支える重要な産業に位置付けられるといえます。

 

 
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