奈良県の桐の取引状況(2019)

 

奈良県は関西地方に属する県のひとつであり、かつては平城京が置かれるなど、日本の政治の中心地として栄えました。現在も多くの寺院を有する歴史ある県として、国内外から多くの観光客が訪れています。奈良県は海を有さない山岳県であり、全体の3分の2の面積が山地となっているため、林業も盛んです。中でも県の南部に該当する吉野地区は広大な森林地帯で、様々な樹種が自生する国内有数の木材の産地となっています。

 

奈良県林業部がまとめた「奈良林業統計」によると、平成30年の時点における奈良県の民有林面積はおよそ26万9千ヘクタールです。その内訳は人工林がおよそ16万7千ヘクタール、天然林がおよそ10万2千ヘクタールになります。樹種については人工林のほとんどを針葉樹が占めていることが特徴であり、一方で天然林については広葉樹の割合が多くなっています。これは林業資源として針葉樹の需要が高いことが、その原因のひとつとなっているようです。

 

樹種別の取引状況を確認してみると、奈良県で最も生産量が多いのはスギであり、その次がヒノキとなっています。その他の樹種の取引状況は少量に限られ、これは全国的な傾向だといえるでしょう。桐材の奈良県における生産量も、やはり少量となっています。日本国内では福島県が桐材の主要な産地となっており、国内生産量の約4割が福島産です。その他には群馬県や山形県などが、桐材の産地となっています。

 

一方で奈良県では古くから伝統工芸が盛んであり、桐材の需要が多い地域となっています。軽くて柔らかく加工性に優れ、高い調湿性を有する桐材は、和ダンスなど様々な用途に幅広く使われてきました。奈良県には能面や祭祀に使用する神具などを製作する伝統工芸家が多く、地元奈良産や国内産の桐材が材料に使われています。一方で桶や下駄や箸などの生活用品には、安価な海外産の桐材が使われることが多いようです。海外産の桐材については、中国が主な産地となっています。

 

 
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