長崎県の檜葉(ひば)の取引状況(2019)

 

長崎県は九州の西部に位置する県で、五島列島や対馬、壱岐などの沖合の島々を擁しています。それらの島々を含めた総面積はおよそ41万ヘクタールで、森林面積は県土の60パーセントを占める24万ヘクタールとなっており、所有形態別で見ると民有林が22万ヘクタール、国有林が2万ヘクタールの割合です。長崎県は急峻な地形と脆弱な地質が多い上に、4千キロメートルにも及ぶ海岸線を有していることから、水源かん養保安林による山地災害の防止が行われてきました。主な樹種はヒノキとスギで、民有人工林面積は1万ヘクタールに及んでいます。特に戦後からヒノキ植栽を進めたことからスギ林の2倍以上のヒノキ林があり、九州各県と比較してもヒノキの生産量が多くなっていることが特徴です。長崎県産の檜葉に関してはおよそ170ヘクタールとヒノキやスギと比較すると割合的に非常に少ないですが大村市がその多くを占めており、佐賀県境の経ケ岳や多良岳周辺の一帯は檜葉希少個体群保護林となっています。大村藩時代に青森から種子を取り寄せて作られた九州唯一の檜葉老齢人工林ですが、心腐れのものが多くなる傾向で成長量も極めて僅かな推移でしかありません。この地域の檜葉は基本的に伐採が禁じられており、学術研究など公益上必要な場合や現状の維持に必要な場合のみ伐採が許可されます。これらのことから長崎県産の檜葉はほとんど流通しておらず、取引状況としては県内の製材会社や木材加工会社で間伐材が僅かに取り扱われている状況で、価格は長さ2メートル幅10センチ厚さ1センチの無垢板が4千円、長さ2メートルで10センチ角の角材は1万円前後が相場です。長崎県の林業を取り巻く情勢は、その急峻な地形により搬出などの生産経費がかかるため維持管理の伴わない森林が多くなっている傾向にあるのが現況で、檜葉に関しても植樹などは期待できないことから、既存林の伐採のみでますます希少な木材になると考えられています。

 

 
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