福井県の栂(つが)の取引状況(2019)

 

福井県は江戸時代から林業が盛んで、良質な栂・ヒノキ・スギを出荷しているのが特徴です。このうち栂の2019年9月現在の取引状況を細かく見ていくと、国内需要以外に海外輸出が盛んであることが伺えます。2018年10月〜2019年9月の1年間で福井県の林業センターで取り引きされた栂の総量は約110万トンで、このうち約42%にあたる80万トンは中国・シンガポール・マレーシアとイギリスに輸出されています。その取引額は約12億2000万円となっており、林業が福井県の重要な産業収益を担っています。国内需要に関しては、2018年からの1年間で約2億円の取り引きになっていますが、林野庁が木材市場取引調査を開始した1980年当初の数値と現在とでは大差はありません。ただし、1985年のバブル経済が到来した時のみ、栂の取引高が急激に高まって86年〜88年の2年間で約40万トンを記録した時期があります。これはバブル景気の影響で各地で戸建て住宅の建設ラッシュが相次ぎ、住宅建材としての栂の需要が高まったのが影響です。その際の取引状況は福井県では約70%が国内向けに取引がなされ、残りの30%にあたる約5万トンのみしか海外輸出をなされていませんでした。現在でも国内用住宅建材で取り引きされてはいるものの、木造建築よりも鉄筋作りで自然災害の影響を受けにくい住居が支持されだしていることから、栂を用いた住居建設に若干の陰りが見えてきています。福井県だけでなく、和歌山県・奈良県など他の栂の産地でも国内よりも海外輸出に力を入れ出している傾向があります。2019年以降の福井県の栂の取引動向を予測すると、今後10年間で現在の110万トンの出荷量が減少していくと見受けられます。これは国土交通省が2017年に提示した資源保全条例に起因しているもので、林業に至っては毎年出荷量に制限を設けることを明言しているからです。2020年から新たな条例が施行されるので、今後の動向に注目したいところです。

 

 
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