奈良県の栂(つが)の取引状況(2019)

 

奈良県は国内屈指の木材取引市場を抱える県で、栂・杉・桧に至っては1980年から今日まで全国1位の出荷数を誇っているのが特徴です。林業が盛んな地域であり、江戸時代には幕府御用地として現在の吉野町から高野町一帯の山林を管理して安定した木材の供給を図っていたほどです。2019年8月現在の栂の取引状況は、前年度よりも14%アップの約250万トンになっていることが奈良県林業センターの報告から見て取れます。林野庁が全国各地の木材取引高の調査を開始した1980年当時は約65万トンの取引しかなかった栂ですが、その後バブル経済の到来して全国各地大規模な宅地開発がなされるようになり住宅建材として栂の需要が一気に高まりました。1985年だと約120万トンの取り引き高になり、さらに木材の海外輸出が解禁されたことも追い風となって、栂が奈良県の林業を代表する木材へとなりました。2019年の取引状況では国内需要は全体の約64%で、残りの36%は中国・カナダ・シンガポールへの輸出になっていることが見て取れます。海外でも住宅建材として用いられている木材ですが、それ以上にエクステリアや調度品に加工をして使われることが多いのが特徴です。奈良県産の栂は木目が美しく、通気性と耐久性に長けている特徴があるため、海外では高級家具に使われるのが高い需要を維持しているポイントといえるでしょう。2010年以降、奈良県では先述した主な取り引き国と姉妹都市協定を結んでおり「奈良県産栂の第二のふるさと」という名目で、地域おこしにも乗り出してます。なお、国内需要に関しては住宅建材の需要率は80年代よりも若干減少傾向にありますが、依然黒字をキープする高水準です。2019年以降の奈良県の栂の取引動向は、海外輸出向けをメインにシフトチェンジをしていうことと予想されます。安定した供給をおこない続けるうえで、限りある資源の保全が今後の課題になることでしょう。

 

 
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