広島県の栂(つが)の取引状況(2019)

 

広島県は瀬戸内海に面した本州西部に位置する県で、北西部には中国山地が広がっています。県の総面積は84万8千ヘクタールで、そのうち森林面積は県土の72パーセントを占める61万2千ヘクタール、所有形態別で見ると民有林が全体の70パーセントのおよそ43万ヘクタールとなっています。民有林の樹種別構成はスギとヒノキの人工林とマツの天然林で全体の56パーセントを占め、スギは樹齢は9〜11齢級を中心に分布し伐採期を迎え、ヒノキは8齢級をピークに分布しており今後伐採期を迎える状態です。広島県産の栂に関しては、県北部の山間部でわずかに見ることができますが、何れも植林されたものではなく自然林であるため計画的な伐採の対象とはなっておらず、木材として市場に出回ることは非常に少なくなっています。栂材は肌目が粗く、節やあてなどの傷が現れることがあり、伸縮と膨張が比較的大きい素材ではありますが、木質が堅いことから床板や天井板、鴨居などに使用されることが多く、特に関西から西の地域では40年ほど前までは栂を使用して建てられた住宅は高級なものとされていました。また、栂の材面に見られる「フロコソイド」という物質をネズミが嫌うことから、ヒノキよりも高く評価されていた過去もありました。しかしながら、成長時に屈曲して伸びる傾向があることや、安価なアメリカ産の米栂が木材市場に参入してきたことから、国内産の栂材は大変希少価値が高くなっています。広島県産の栂の取引状況としては、そのほとんどが県内の木材加工会社で、主に住宅のフローリング材や木型、パルプ材に加工されて流通しており、価格は長さ2メートル幅15センチ厚さ1センチの節有無垢材が4千円、長さと幅が同じで厚さ3センチの厚材は5千円前後が相場です。今後は、平成19年に導入された「ひろしまの森づくり県民税」を活用した森林ボランティアによる植樹と面積の拡張が期待されています。

 

 
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