奈良県の赤松の取引状況(2019)

 

奈良県は国内有数の木材市場を有しており、県内に4か所の林業センターがあります。もっとも多く取り引きされているのが杉で、次いで桧・赤松となっています。奈良県は約86%が山林になっているため、江戸時代から林業が主要産業でした。現在も林野庁直轄の観測所が十津川村にあり、苗木の品種改良等がおこなわれています。2019年6月の奈良県の赤松の取引状況は、約25万トンであることが林業センター吉野支部の報告書から見て取れます。赤松に限定すると国内では4番目の取引高となっており、主にベトナム・イギリス・アメリカといった海外市場向けが総量の80%を占めています。赤松は日本では住宅用建材に使用されませんが海外の住宅建設用に需要があり、奈良県産の赤松だと幹が太くて耐久度の高さが際立っていることから高級宅建設向けに輸出されています。林野庁が全国47都道府県で木材取引状況調査を開始した1985年の段階では、奈良県では杉・桧のみしか市場取引をされていませんでした。その大半が国内向けであり、当時は奈良県大淀町にのみにしか林業センターもなく規模も今の1/4程度です。ところが1990年に木材の自由貿易がスタートしたことで、県内の大半を占める木材を生かした林業を国際的にアピールするために輸出を開始しました。海外では木材の加工技術が進んでいなかったため、奈良県は林業センターを増やして加工場も併設して丸太や角材に加工してから大阪・神戸の各貿易港まで運ぶように工夫もされています。加工場では近隣住民が勤めており、山間部で過疎化が著しい十津川村・北山村・吉野町では若い世代の働き場所になって住民流出の歯止めにもなりました。2019年以降の奈良県の赤松の取引動向は、今後も輸出が大半を占めていくと予測できます。現在の3か国だけでなく、新たに輸出先を開拓すればより取引高の増収も期待できるので、積極的に県と林業センターが国際アピールする必要があります。

 

 
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