富山県の杉の取引状況(2019)

 

富山県は日本列島の中央北部に位置し、三方を急峻な山々に囲まれ天然の生け簀といわれる深い湾を挟んで日本海に面しています。古くから家づくりに杉を使用してきた歴史があり、主に柱として使われてきました。現在でも富山県内の人工林の大部分に植栽されており、生産される一般材や間伐材のほとんどが杉です。県を代表する主な杉にはタテヤマスギ・ボカスギ・マスヤマスギの3種類があり、その中でも県東部の山岳地帯に自生するタテヤマスギは県木に指定されています。年輪の幅が狭く強度に優れていることから、主に建築材に使用されており、ボカスギ、マスヤマスギは建築材以外に建具や木工材に使用されています。産業という視点でみた場合に木材関連業は富山県の重要な産業のひとつといえます。県産材の素材生産量のうち製紙用チップとして利用される広葉樹を除くとほとんどが杉で、取引状況も県産材の大半が県内で使用されますが、加工された木製品の多くは東京・大阪・愛知などの三大都市圏を中心に出荷されていきます。富山県では健全な森林環境を維持することを目的に県産材の利用を促進しており、木造住宅の新築や増改築に対して支援事業を行なっています。また民間・公共全ての非住宅建築物への県産材使用への理解を深めるために講習会や見学会を開催したり、地元の森林組合が県産材を利用して学童用の机や椅子を開発したりと普及活動も活発です。戦後、増加する木材需要に対応するためスギやヒノキを大量に植林したことで多くの人が花粉症に悩まされることになりましたが、富山県内で発見された無花粉杉がきっかけで花粉を飛散させない杉の研究が進み、現在では種子や挿し木で増殖させることが可能になりました。富山県でもさらに研究が進み無花粉であるだけでなく成長等に優れた品種が開発され、現在、県全体で普及推進事業に取り組んでいます。水と緑に恵まれた県土を支える多様な森づくりの一環として大切に育てられる杉は、建築材や加工品の素材として県内、県外を問わず大切にされていくでしょう。

 

 
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