栃木県の杉の取引状況(2019)

 

宇都宮市の餃子や観光地の日光及び那須など目玉が多い北関東の栃木県は内陸県ですが、その気候は太平洋側の地域の特性が強いです。そのため基本的には風の影響を受けやすく、南風が吹けば夏の降水量が多いものの、北風が吹けば乾燥をもたらします。
太平洋側気候と言えば温暖な気温が多いですが、栃木県では夏の高温多湿と冬の乾燥が特徴的です。
特に冬の風は強く、「二荒おろし」や「那須おろし」などと呼ばれています。他にも特徴を挙げるなら山間部は豪雪地帯になっている事や夏季に入れば高温多湿のせいで積乱雲が多くなって雷が起こりやすい事、さらには放射冷却の影響も受けやすい事などです。
そんな栃木県における杉の取引状況は他の県と比較すれば発展しています。
その理由は単純で、栃木県は八溝杉を有しているからです。八溝杉とは栃木県と茨木県、そして福島県のそれぞれの県境をまたいでいる八溝山という山で生育された樹木となります。
八溝山の歴史は古く、古来から地域の人々が信仰を捧げてきました。
山頂には八溝嶺神社があり、山の八合目には源頼朝が発願し、源実朝が西国の霊場に沿って制定した坂東三十三箇所の1つであり二十一番札所でもある日輪寺があります。山や日輪寺の名前は空海が関わっているという伝承も残されていますが、八溝山の杉の評価は美しさゆえです。ヒノキや赤松ならともかく、杉の色合いは素朴であるのが基本とされています。しかし八溝杉は美しい赤みをしており、おまけに木目も綺麗です。見た目だけではなく、虫の被害を受けにくいうえに曲げ強度が強いところなど機能性も優れています。そのため伐倒した後はそのまま3か月から半年かけて寝かせ、木材全体の含水量を低下させて美しい色合いを出すようにしているほどです。この処置がされた木材を葉枯らし材と言い、その手間をかけるほどの価値があります。現に八溝杉は国内における杉のブランドに数えられており、高級材として有名です。

 

 
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