和歌山県の杉の取引状況(2019)

 

和歌山県は紀伊半島に位置する地域で、県の約8割が紀伊山地という山間部を占めています。和歌山県の代表的な産業は林業であり、江戸時代から紀伊山地で良質な杉と桧を採ることが可能です。この地域で伐採された杉や桧は江戸城建設の際の使用され、紀州出身の8代将軍・徳川吉宗が紀州藩の材木問屋をすべて幕府御用達にしたほどです。2019年5月の和歌山県の杉の取引状況は、前年比の約4.5%アップの52万トンの取り引きがおこなわれました。このうち国内需要が約35万トンで、住宅用建材に用いられています。海外向け輸出ではカナダ・イギリス・マレーシアの3か国で20万トンの数量です。海外では住宅用建材ではなく、船やウッドデッキといった外装用材料に使われているのが特徴で、国内では規格外となっている材木も取引の対象にされています。林野庁が全国各地で木材取引状況の調査を開始した1984年の段階では、和歌山県の杉の取引状況は2019年よりも大幅に少ない約9万トンのみでした。現在のように大規模な市場に開拓された理由は、全国各地で山林保全運動が活発化したからです。1984年〜1996年まで、全国1位の木材市場を有していた富山県では山林伐採の総量規制を掛けるようになり、年間計12万トンしか杉・桧の伐採ができなくなり木材市場も大幅に縮小化されました。この穴埋めをするかのごとく、和歌山県では豊富な山林資源を県の産業の代表に据えるようになって現在に至ります。和歌山県の林業センターは紀の川市と熊野市にあり、紀の川市の市場で取り引きされた木材は大阪府の南港からコンテナ船に積み込まれます。熊野市の場合は勝浦港から東京の晴海埠頭を経由して海外へと輸出されています。2019年以降の和歌山県の杉の取引動向は、国内の住宅建材の需要が高まったままなので取引高が減少することなく、同水準を保ちながら県の財政を支える産業として維持されることでしょう。

 

 
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