奈良県の杉の取引状況(2019)

 

奈良県は近畿地方の中央部に位置し、約8割の面積が山間部になっているのが特徴です。紀伊山地の5割を占めており、杉・桧の産地として全国的な知名度を誇っています。木材市場にあたる林業センターは奈良県吉野町にあり、県内と和歌山県の一部で伐採された材木はすべてここに集められて取引がおこなわれます。2019年の奈良県の杉の取引状況は、前年度の約10.4%アップの計420万トンになっています。この数値は、林野庁が全国各地の材木取引状況調査を開始した1984年から現在までの中でもっとも高い取引高を示してます。1984年の段階では、奈良県で伐採された材木は国内のみでしか取引されておらず、その数は約36万トンでした。ところが1990年に入ると、中東・アメリカ・ヨーロッパとの材木貿易を開始したことで大きな収益を得られるようになりました。杉の場合は住宅用建材はもちろんのこと、家具などの調度品へと加工がなされますが、奈良県の杉はきめ細やかな木目と高い強度を持っていることから、特に高級住宅の建設に使用されています。国内の需要も高く、京阪神・関東へと陸・海の両方で現地へと運ばれています。1995年には林業センター直轄の材木加工場も設置され、ここで角材にして取引されるようになりました。これは輸出時の税関検査に数項目を免除されることと、より多くの材木をコンテナに積み込めるように工夫したことで、1本あたりの販売価格が若干高くなりましたが現地で加工する手間が省けたことを受け更なる取引上昇へと繋がっています。2019年の国内需要も12%の上昇率を記録していますが、これは2018年に広島・大阪で発生した豪雨と台風による住宅損壊の補修や新築物件の増加が影響していると見受けられます。2019年以降の奈良県の杉の取引動向は、大きな変動はなくとも今後も安定した取引を維持して、奈良県の代表産業として確立されていくことでしょう。

 

 
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