滋賀県の杉の取引状況(2019)

 

日本の最も有名な戦国武将織田信長が愛知県から滋賀県に拠点を移したのは、当時首都だった京都へのアクセスのしやすさだけでなく山間部なので豊富な木材が沢山あったことで拠点を置くのに有利と考えたからです。その織田信長の狙い通りに、滋賀県は現在に至るまで関東と中部そして関西の交通の拠点として発展するだけでなく弘法杉といった質の良い木材の輸出によって住宅やお城の建築に大いに役に立ちます。そんな質の良い木材の輸出によって発展した滋賀県ですが、現在の取引状況は減少傾向にあるのです。その背景にあるのが、滋賀県に限らず全国で悩みの種になっている後継者不足の問題になります。滋賀県の杉を含む木材は標高の高い山による日照時間の長さと降雨量のバランスの良さによって品質が良く、それ故にそれぞれの土地に専門の管理者が配置され環境を管理していたのです。しかし日本国内でまかっていた木材も人口増加と景気の悪化で価格が下落し、その代わりに外国産の木材が入ってきたことでコストのバランスが取れなくなったのです。それでは次の世代に山の管理を任せられないと、所有権を放棄することが多くなることで伐採量も減り取引状況が悪化するという悪循環になります。ただ山の管理は命にかかわる事案であり、管理がされていない森林地区は土壌の状態が悪くなり土砂崩れのリスクを増やすだけでなく山の環境の悪化が害獣被害も増加させるので市民生活に悪影響を与えてしまいます。これらの問題は滋賀県の人口問題にもかかわってくるので、自治体と市場はこの流れを食い止めようと様々な取り組みを行っているのです。生産者のモチベーションと利益の向上の双方を満たすために、材木に認証を取り付けることで資金の流れを透明化させています。そして滋賀県の材木を使った場合において住宅購入時の割引サービスや、林業と滋賀県各地の商工会議所と連携をして地元の企業との橋渡しをすることで新しいビジネスモデルの構築など木材の取引状況を戻す活動を始めているのです。

 

 
トップへ戻る