東京都のモミの取引状況(2019)

 

モミはマツ科の針葉樹で、国内では秋田県と岩手県の南部より南に分布しています。クリスマスツリーに使われることで広く知られており、心材と辺材ともほとんど白色であることから神聖な感じを与えるため、冠婚葬祭に関連した道具に使われることが多いことに加え、木材特有の匂いもほぼ無いことから食品に接するものにも多く使用されていることが特徴です。木材としてはやや堅い性質を持っているものの、乾燥の際に歪みやすく耐久性もあまりないため、住宅用建材としてはあまり使用されずに主に内装材として需要があります。東京都は首都圏でありながら、その約4割が森に囲まれた世界の大都会の中でも珍しい環境で、その東京で採れるスギやヒノキ、モミなどの木を約10年前から「多摩産材」と命名し、都内を中心に建物やテーブル、椅子などの家具、スプーンやフォーク、まな板などのカトラリーに積極的に利用されている他、多摩地域の森林協同組合もイベントなどを開催し、多摩産材直売ショップなど利用促進に励んでいます。東京都における樹種別の生産量はスギとヒノキでおよそ90パーセント近くを占めており、モミの生産量はおよそ5パーセントと多くはありませんが、モミは輸入量が少ないため木材市場でも重要な位置を維持しています。主な取引状況は多摩地区の木材加工会社で、都外への搬出はほとんどありません。主要品目は「もや材」とも呼ばれる細丸太で、直径10〜13センチ前後のものが1本単価で売買されています。相場はおよそ1本当たり5000円前後で、直径30センチ前後の皮をむいた状態になると1メートル当たり3000円程度で取引されますが、造園材料に多用されるため、公共工事などの材料需要が増加する冬場から春先にかけては価格が上昇することもあります。今後はモミの特徴である白色を活かして更なる利用促進を図ると共に、資源の枯渇に備えた植樹や伐採、害虫対策などを計画的に行うことが重要となっています。

 

 
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