長崎県五島市の木材市場の現況(令和元年 2019)

長崎県五島市の木材市場の現況(令和元年 2019)

 

長崎県五島市は長崎市の西部にある五島列島に位置するところで、5つの島の中心地になります。古くから漁業と林業が盛んで、江戸時代には島内で伐採されたスギを薩摩藩まで運んでそこから廻船を使って江戸まで運んでいたと文献に記されているほどです。現在も五島列島ではスギ、アカマツ・ヒノキの3種類を伐採して全国各地の木材市場に流通しています。令和元年における長崎県五島市の木材市場の現況は、1970年から林野庁が調査をしてきた中では高水準の収益率になっていますが、2015年の収益率のピーク時と比べると約25%の減収になっています。この減収の原因は、韓国向けのアカマツの輸出取引が停止したことに起因しているといえます。五島市は日本国内でもっとも韓国・プサンに近いところであり、1日4往復の直通フェリーも通っているところです。1972年の日韓国交正常化以降、五島市では韓国に住宅建材となるアカマツを年間15万トンもの量で輸出をしていました。ところが2016年からは、戦時中の保障を巡った意見の対立が根深くなり日韓関係の悪化して木材の輸出もストップするに至りました。2015年までは長崎県五島市の木材市場の取り引きの中で韓国向けの輸出が45%を占めており、中国・マレーシアといったアジア諸国向けは25%、残りが京阪神や関東に向けてスギ・ヒノキが出荷されていたことが長崎県林業センターの報告書に記載されています。年間収益の半数を占めていた韓国向け木材輸出がストップしているため、今後は国内向けや他の海外輸出先を開拓することが令和元年以降の長崎県五島市の木材市場の課題であるといえます。なお、現況の打開策として長崎県林業センターが2020年より新たな輸出先としてベトナムを視野にいれており、取引交渉に乗り出しました。韓国同様、ベトナムでも住宅建材としてアカマツが用いられているため、取引が軌道に乗れば2015年以前の収益を取り戻すことが可能です。

 

 
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