世界の瀬取りの歴史(2019・令和元年)

 

瀬取りと聞くと、北朝鮮に船舶を介して国連がリストアップしている物資の受け渡しを秘密裏に行うこと、と考える人が多いですが、本来瀬どりとは、大型の貨物船から小型の船に荷物を移すことを意味しており、それ自体は国際的に違法とかいうことではありません。今現在も世界中で通常の港湾業務として行われています。

 

船のサイズは大きいほど輸送効率がアップするので、貨物船の歴史はその大型化のための改良の歴史でもあります。しかし、船が大型になるほど接岸して寄港できる港は限られます。効率よく大型船で目的地に近づけても、接岸できなければ荷物を下ろせないため、大型船舶の接岸が可能な港に荷物を下ろしてそこから陸路で荷物を運送することは可能ですが、時間的、エネルギー効率的にはロスが大きくなります。

 

この問題を解決するためには大型の港を増やすか、船のサイズを接岸可能なものに小さくすることが考えられますが、皆との建設は国家事業として行わねばならないスケールで実行が簡単ではなく、船の小型化は効率の低下を伴います。そこで、これらの折衷案として瀬取りが行われることとなります。
大量の荷物を市場に近い位置まで大型船で運び、洋上で瀬取りを行って、入港可能な小型船舶で荷物を陸に届けるのです。

 

このように輸送業務としては当たり前のことなのですが、船が港に入らず、洋上での荷物の受け渡しが可能となることから、国際的な監視の目をかいくぐりやすくなるということで、近年では核兵器開発で国連から制裁を受けている北朝鮮が、戦略物資の輸入を規制を回避するために、この瀬取りを頻繁に行っている疑いが浮上しています。

 

洋上の瀬取りが衛星写真で確認されても船籍や何の物資を受け渡しているかの確認が困難なため、国際社会はこの監視を強めています。
このため、ニュースで瀬取りという単語が登場する際は、犯罪的な行為をイメージさせるような扱いをされることが多いですが、あくまで瀬取りの行為そのものが問題ではなく、その目的が問題視されていることは把握しておいたほうが良いでしょう。

 

 
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